はじめに|利回りを知らずに投資はできない
不動産投資を始めるとき、多くの人が最初に目にする数字のひとつが「利回り」です。物件の広告や資料には「表面利回り8.5%!」といった表現がよく登場しますが、そもそもこの利回りとは何を意味しているのでしょうか?
実は、利回りの計算方法や意味を正しく理解していないと、「数字にだまされて物件選びを間違える」「思ったほど利益が出ない」などのリスクにつながりかねません。
この記事では、これから不動産投資を始めたい初心者の方に向けて、利回りの基本的な意味や種類、具体的な計算方法、注意点、そして目安となる数値などを、できるだけわかりやすく解説していきます。
そもそも「利回り」とは?
「利回り」とは、投資に対して得られる収益の割合を示す指標です。
不動産投資における利回りは、主に「家賃収入」をベースに計算されます。
簡単に言えば、「その物件を買ったら、どれくらいの割合でお金が戻ってくるのか?」を数値で表したもので、投資の収益性を判断する重要な指標になります。
たとえば、1,000万円の物件を購入して、年間の家賃収入が80万円だった場合、利回りは以下のように計算されます。
利回り(%)= 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
→ 80万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 8%
このように、利回りは「収入」と「投資額」の関係性を数字で示してくれるため、複数の物件を比較する際の目安にもなります。
表面利回りと実質利回りの違い
不動産投資でよく使われる利回りには、主に以下の2種類があります。
- 表面利回り(グロス利回り)
- 実質利回り(ネット利回り)
(1)表面利回りとは?
表面利回りとは、「物件価格」に対する「年間家賃収入」の割合を示すものです。広告でよく目にするのはこちらで、以下のように計算します。
表面利回り(%)= 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
ただしこれは、経費などを一切考慮していない「理想的な数字」なので、実際の収益とは異なることに注意が必要です。
(2)実質利回りとは?
実質利回りは、実際にかかる「諸費用や維持管理費」などを差し引いたうえでの利回りです。こちらのほうが、よりリアルな収益性を表します。
実質利回り(%)= (年間家賃収入 − 年間支出)÷(物件価格 + 初期費用)× 100
実質利回りは、購入時の諸費用(仲介手数料や登記費用など)や、運用時のコスト(管理費・修繕費・空室リスクなど)を含めるため、表面利回りよりも低くなるのが一般的です。
利回りの計算に使う主な費用項目
実質利回りを計算するうえでは、どのような支出を含めるかが重要になります。以下のような費用が代表的です。
- 物件の取得費用(仲介手数料、登記費用など)
- ローン金利・保証料・団信
- 管理費・修繕積立金(マンション)
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険・地震保険
- 空室リスク(年間家賃の5~10%分)
これらを考慮することで、より正確な利回りが算出できます。
利回りの目安はどれくらい?
利回りの目安は、物件の立地・種別(新築 or 中古)・投資目的によって異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。
物件タイプ | 表面利回りの目安 | 実質利回りの目安 |
---|---|---|
新築ワンルーム(都心) | 3~4% | 1~2% |
中古ワンルーム(都心) | 5~6% | 3~4% |
中古一棟アパート(郊外) | 7~10% | 5~8% |
数字だけを見ると「利回りが高い物件がいい」と思いがちですが、利回りが高い物件ほどリスクも高い(空室率が高い・築年数が古い等)ことが多いため、単純な数字の比較には注意が必要です。
利回りだけに騙されないために
初心者の方がよく陥る失敗のひとつが、「表面利回りだけを見て物件を選んでしまう」というものです。
以下のような落とし穴にも注意が必要です。
- 広告の利回りは、空室リスクや税金が考慮されていない
- 満室想定の家賃収入で計算されていることが多い
- 利回りが高すぎる物件は、実は問題を抱えている可能性もある
利回りはあくまで「参考値」であり、最終的には物件の立地や将来性、修繕履歴、管理状況なども含めて総合的に判断することが重要です。
まとめ|利回りを正しく理解して失敗しない投資を
不動産投資における「利回り」は、物件の収益性を示す重要な指標です。
表面利回り・実質利回りの違いや、計算に含めるべき費用、目安となる数値などを理解しておくことで、数字に惑わされずに本質的な物件の良し悪しを見極められるようになります。
初心者ほど、利回りの「高い・低い」に一喜一憂するのではなく、その数字の背景を深掘りし、リスクを加味したうえで自分に合った投資判断をすることが大切です。
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